ぎゃらりい たねからでは2019年1月15日(火)より2月2日(土)まで、第一回自然と抽象展“表現者の集い”を開催中です。今回は絵画、彫刻、工芸、版画の4分野から総勢23名の作家さんに出品いただいています。順次それぞれの作品について紹介したいと思いますが、まずはこの企画展の主旨や楽しみどころをご案内いたします。
美術史上で抽象画が登場したのは1900年代の初め、カンディンスキーやモンドリアンがその創始者と言われています。しかし、2万年前にクロマニョン人が描いたとされるラスコーの洞窟壁画を見ていると、自然との対話はすでに始まっており、自然を現実として捉えて描き出そうとした行為はすでに抽象画の域にあるのではないかと思います。
太陽と大地、海や風、動物や植物、昆虫など、自然と作家との出会い。例えそこに花が描かれていたとしても、作家はその花の先に何を見て、どのような対話をしたのか。そんなことを観る者が自由にイメージできるのは、抽象作品を鑑賞する大きな楽しみのひとつでしょう。そうした楽しみをご提供することがこの企画展の大きな狙いになっています。
またこの企画展の特徴は、絵画であれば4号から8号程度の小品で全体を構成しているところにあります。大きな作品も迫力がありますが、小さなスペースに作家のエネルギーが凝縮されたような小品には独特のパワーが宿っているような気がします。
企画展開催にあたっては、前述した主旨を作家の皆さんにご説明して出品をお願いしたところ、全出品作がすべて新作となりました。皆さん、意欲的にテーマに取り組んでいただき、結果的に作家の創作に臨む熱量が小さな作品からあふれ出ているようなものばかりとなりました。
さらに今回は創作活動や自然に対する想いを作家の皆さんに短いコメントで表現していただき、これを作品と共にご覧いただくという試みを行っています。決して作品の意味を説明しているわけではありませんが、文章であれば「行間を読む」ためのヒントになるような、作品を観る方の楽しみを広げる一助になっていると自負しています。
実はこのコメントには作家の方々にとっても多くの気づきや刺激があったようです。初日に開いたオープニングレセプションには多くの作家の皆さんにもご参加いただきましたが、作家同士、互いのコメントをきっかけに様々な議論が展開しました。そばで聞いているとたいへん興味深かったですし、これをきっかけに「自然と抽象」を主題に作家が集まるサロンを作ろうという話にまで発展しました。
ぎゃらりい たねからは植物や自然をご縁につながりながら、ギャラリーの枠にとらわれない活動を展開しています。手探りでスタートした取り組みですが、この第1回自然と抽象展をきっかけに、その可能性が本格的にふくらみ始めました。
一般的にギャラリーは作家と買い手との接点となる場所ですが、ぎゃらりい たねからはそれだけでなく、作家同士の交流や私どもと作家とのコラボレーション、そして東京という街にふさわしい様々な国の方との関係づくりなど、多面的な視点で人の交流が始まる場を志向しています。今回はそうなっていく予感や、そうならなくてはいけないという私どもの決意が確たるものになりました。
会期中にご覧いただければ、このわくわく感が皆さまにも伝わるのではないかと思います。皆さまのお越しを心よりお待ち申し上げています。
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